海外メンタリング事情

”メンタリング”という言葉が徐々に社会に広まりつつありますが、数年前に比べて企業などの組織の取り組み方が変化したように思います。それは、メンタリングを単なる人材育成の一手法として捉えるという発想から組織運営の根幹として捉えるという方向に向っているということです。具体的には、メンタリングが組織のミッションや理念とリンクしたカタチで導入されるケースが多くなったということです。そして、その背景には、最近の拝金主義に陥ったIT企業や偽装問題を引き起こした建設関連会社などの結末を見据えた動きに関連していると思います。

実は、この動向は、日本だけにとどまるものではありません。3月に行われたアメリカでの国際メンタリング協会(IMA)の会議においても同じような傾向が見られました。この会議には、北米、ヨーロッパ、オセアニア、アジアからの参加者が集まりました。私がアメリカのIMAの会員になって4年目ですが、年々コンフェレンスで討議される内容が変化していっているのが感じられます。それは、手法(メンタリングの方法)の議論から哲学(メンタリングの原理)の議論へ、そして、部分の議論から組織全体の議論へシフトして行っているということです。

このコンフェレンスで発表した我々(吉川宗男名誉会長・筆者)のプレゼンテーションの内容も例外ではありません。我々は、“人間力”を定義し、それらを統合することによる相乗効果とそのプロセスを基本哲学から述べました。この内容に各国のメンタリング研究者が大きく注目しています。その背景には、各国における深刻な社会問題が存在すると思います。所謂先進国と言われる国の人々が持つ悩みは深く、ビジネスや教育の分野において、表層ではなく本当に“人を育てる”ことの根本的な変革が求められているからです。私達は、アジアの代表としてこの世界的なニーズに大きなインパクトを与えたと言えるでしょう。そして、これからもこの傾向はますます強くなっていくのではないでしょうか。