人財育成とメンター制度
●人財育成と「メンター制度」
いつの時代にも言われる言葉に「事業(企業)は人なり」というフレーズがあります。今、企業は、規模の大小を問わず、人財に関して、また、組織運営に関して様々な問題を抱えています。そして、それらの問題や課題が共通しているという現象が見られます。正に「事業(企業)は人なり」を実感せざるを得ない状況ですね。
「メンター制度」は、人財に関する問題や課題の多くを解決してくれるスグレモノと言うことができます。そんな「メンター制度」の様々な側面をシリーズでご紹介させていただきたいと思います。
●このコラムは、次のようなニーズをお持ちの方に、是非、お勧めします
・これからの新しい人財育成について考えたい。
・具体的に「メンター制度」の導入を考えている。
・「メンタリング」とはどんなものか知りたい。
・組織の活性化の方法を探している。
・将来、素晴らしい「メンター」になりたいと思っている。
・その他、人の成長と成功の為に親身になって取組みたいと考えている。
●「メンタリング」って何?
情熱を持った支援者(メンター)が、支援を必要とする人(メンティ)に対して 成果と効果の両面において、共に学びながら一定期間継続して行う支援行動全体を“メンタリング”と呼んでいます。従って、メンタリングでは、相手を無条件に助けるのではなく、最終的には、その人が自立して考え、行動できるように導きます。
イキイキワクワクと目標に向かっている人を想像して下さい。元気、やる気のない人をそんな風に変化させることをメンタリングととらえる事もできます。この状況は、会社においては上司・部下、学校においては生徒と教師、家庭においては親と子供、病院においては医師と患者・・・と社会のほぼ全てのところで見ることができます。
●企業ではど扱われているの?
今、多くの組織(会社等)でメンター制度が導入され始めています。制度として運用される場合は、特定の目的(キャリア支援、個人目標の達成、組織の活性化、等など)を達成する為に構造化され、ルール化されて実施されます。従って、期間、メンタリングの目的、マッチングの方法、報告の様式、面談の頻度、等・・・人事や人材育成等の担当部署が決定することになります。このように制度として行うメンタリングをフォーマルメンタリングと呼びます。
●「メンター」ってどんな人?
メンターとは、一言で言うと、支援マインドを持ち、メンティへの内発的モチベーション(強制や押しつけではなく、自分からやりたいという動機)を高め、メンティの自発的行動を誘発し、課題(目標)の達成や問題の解決に到達できるよう随所において支援する人のことです。家庭・学校・企業・医療機関・福祉機関・コミュニティなど、誰かの支援を必要とする人が集まる全ての場においてメンターが存在します。
上記の定義は、少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、メンタリングの姿勢とスキルを身につければ、誰にでも実行できます。それでは、具体的にメンティから見た、理想のメンター像を機能別にピックアップしてみましょう。
①コミュニケーション
どんな内容でも(場合によっては仕事以外の内容)気軽に相談でき、うまく行かない時などは、悩みや愚痴を聞いてもらえる存在であること。
②社内コーディネート
メンティの仕事の成果やポテンシャルを適正に評価し、社内でのネットワーク(人脈)づくりを支援したり、将来におけるメンティの社内で活躍できる可能性を具体的に示唆してくれたりする存在であること。これは、表面的な評価では分からないような社内に内在する能力を早期に発見し、会社に役立てる作業とも言えるでしょう。
③キャリアモデル
メンターの生き方を見本にして、メンティが自分のキャリアを考えることができるような存在であること。もちろん、メンターとメンティは同じキャリアを進む訳ではありませんが、仕事に対する姿勢やキャリア自体に対する考え方は、メンターが大きく影響を与えることになります。
●先進国に共通する現象として:
自殺者の増加、児童や高齢者への虐待の増加、うつ病や睡眠障害などの精神疾患の蔓延、若者のひきこもりの増加、凶悪犯罪の増加・・・これらは、先進国と呼ばれる高度に経済が成長した社会に共通する社会の症状です。もちろん、日本も例外ではありません。
このような状況下では、人間関係(親子・上司部下・教師生徒・等)も大きく変化してきています。このような変化の下、どうすれば、子供が意欲を持って学習や遊びに専念できるようになるのでしょうか。どうすれば、会社で若者が意欲を高め、仕事の成果を上げることができるのでしょうか。私達は、そこにメンターの存在の必要性を感じています。
あまりにも価値が多様化し、モデルを見つけることが難しい現代の状況下では、生き方を示唆してくれるナビゲーターのような役割の存在が必要となるのではないでしょうか。正に、そのナビゲーター役がメンターなのです。モデルが存在しない訳ですから、メンターは、一つの“正しい生き方”を教えたり、示したりするのではなく、その人の内面(潜在領域)から“その人に合った生き方”を引き出す(本人が気付く)ように導くことが求められます。
●時代性から考えるメンターの役割とは:
メンターは、家庭でも、学校でも、会社でも、他者を元気に本気にさせ、自ら考え、自ら行動する“自動者”を育てます。自立性と協調性の両面を持った、また、変化のスピードに適応する能力を持った意欲的な人財を育てる支援者でもあります。この大変化の時代だからこそ求められる役割ではないでしょうか。
●「繋がりの感覚」がキー:
現代社会においては、家庭、学校、職場などあらゆる場に於いて、「繋がりの感覚」が薄れつつあります。ですから、メンターは、いかに「繋がりの感覚」を大切にし、他者の成長を支援するかを、その姿勢、方法論、スキルの面から理解する必要があります。
より多くの方が、「メンター」や「メンタリング」について学んでいただき、それぞれの現場(家庭、職場、学校、地域など)において実践していただくことによって一人でも多くの「元気、本気の人財」を生み出していけるのではないでしょうか。
●メンタリングには様々な成果や効果が期待できる:
「他人を元気にすると自分が元気になる。」これは、私が尊敬するメンター、福島正伸氏のことばです。私達は、誰かを元気にすることで、自分自身を元気にすることができます。それは、そのプロセスに於いて、たくさんの共創物(相手と自分によって生み出されるもの)を手に入れることができるからです。それは、感動、勇気、喜び、発見、成果・・・、時には、悲しみ、困難、絶望感・・・。人間は、他人と繋がることによって「生きている」、また、「生かされている」という実感を持つことができるのではないでしょうか。